【5月22日の東海選手権・中京学院大戦の10回裏、2者連続三振を奪って試合を締めた江南さん=静岡市駿河区の静岡県営草薙球場で】

 三重県大学野球リーグを7季連続で制している皇學館大(伊勢市)の主力投手の一人が、名張市出身・在住で教育学部3年の江南怜さん(21)だ。セットアッパーや抑えなど、試合の流れを左右する大事な局面で起用され、1年秋から今春までの県リーグでは失点ゼロを誇る。3県代表が全日本選手権の出場権をかけた5月22日の東海選手権(静岡県営草薙球場)でも快投を見せ、チームは3年連続2位と悔しさを味わったが、目標に掲げるプロ入りを目指す身長177センチの右腕に注目が集まっている。

 父や兄にならい、名張小3年の時に名張少年野球団へ入団。名張中を経て、2015年夏の全国高校野球選手権大会に出場した津商業高(津市)へ。名門で背番号1を任されたが、3年夏の選手権県予選は初戦で大敗を喫した。

 「本気で野球をするのはここまで」。そう思っていたが、ある野球関係者に言われた言葉が気持ちを高ぶらせた。「君たちは『最強世代』だから」―。もう一度スイッチを入れ直し、県内の同世代選手が多く在籍する皇學館大へ進んだ。

 大学野球は投手が打席に立たない指名打者(DH)制で、より投げることに集中できる。変化球は新たにスプリットとカットボールを習得し、最高球速は144キロと高校時代より5キロほど速くなった。拮抗した場面での起用が多いのは、築いてきた信頼の証。森本進監督(63)は「球の切れや制球力で鋭く投げ込むタイプ。研究熱心で、部全体への目配りもできる頼もしい存在」と評価する。

東海選手権2試合 悔しさも喜びも

 毎年6月に東京・明治神宮球場などで開かれる全日本選手権に、皇學館大は7年前の15年に出場し、2回戦に進出している。「2戦目の敗戦投手になった昨年の借りを必ず返す」との強い思いで臨んだ今年の東海選手権。初戦の対静岡大は1点リードされた場面で2番手として登板し、四死球や失策も絡んで点差を広げられ、0‐5で敗れた。

 背水の陣で臨んだ対中京学院大(岐阜)は、9回2失点と好投した4年生左腕・北川寿頼さん(名張高出身)の後を受け、2‐2の同点で延長タイブレークとなった10回、先攻の味方が2点をリードしたその裏に登場。押し出し四球で1点差とされるも、最後は3、4番を得意のカットボールで連続三振に切って取った。

※両試合の結果詳細、その他の写真は「伊賀・名張の高校野球応援ブログ」(http://blog.livedoor.jp/iganabari_baseball/)に掲載

ピンチの場面で森本監督(右)から言葉を掛けられる江南さん。左は2年の床辺捕手=同

 「お世話になった先輩たちと一緒に全日本へ出たい」。その思いは今年も目前でかなわなかったが、「お前で負けたら仕方ない」と送り出されたマウンドでは、悔しさだけでなく喜びも全身で味わった。「怖がらず、強気に攻めるピッチングを続けていきたい」。一回り成長した右腕が、野球に情熱を注ぐ仲間たちを引っ張り、目標に向かって諦めず進んでいく姿がこれからも見られるはずだ。

2022年5月28日付820号2面から

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