【かやぶき屋根のふき替え作業には地元住民らが参加(提供写真)】

 奈良県宇陀市の山間にある榛原八滝にまもなく完成する、築150年の古民家を改修した宿泊施設「うだ薬湯の宿やたきや」で、5月中旬から「薬草のまち」の自然を満喫する薬草ツーリズム(体験・交流型観光)が始まる。

 同市古民家活用地域活性化協議会が農水省の農山漁村振興交付金を活用し、3年前から取り組んでおり、現在同協議会の主要メンバーで構成する「なつかしみらいサービス株式会社」が事業を運営している。

 4600平方メートルの広大な敷地の高台に建つ宿泊施設は、木造平屋建て。太陽が当たると黄金色に輝く茅ぶき屋根の両妻部分を瓦ぶきにした「大和棟」の母屋と2つの蔵、離れがあり、4部屋に16人が宿泊可能だ。薬湯を張った信楽焼の浴槽に入り、疲れを癒やす。3部屋続きで計43畳の和室レストランでは、最大24人がゆったりとランチを楽しめる(宿泊、ランチとも予約制)。

 売り物のヘルスツーリズムは運動、休養、栄養の3要素を含んだツアー。利用客は施設を起点に、「大和当帰」「大和橘」などの薬草や大和野菜を栽培する2千平方メートルの薬草農園で摘み取り体験をする。摘み取った薬草や野草は東京からUターンしてきた専属シェフが創作イタリア料理にして提供。

 食後は、国史跡の「文弥磨呂の墓」や五社神社を巡り、インストラクターの指導でストレッチやヨガなどを楽しむ。千年桜で有名な佛隆寺や女人高野で知られる室生寺も近く、自転車などで巡るツアーも提案していく。

 同協議会代表で、同社代表取締役の田中太見夫さん(60)は「コロナ禍などさまざまな困難があった中で、オープンまでこぎつけることができたのは、地域や関係者の皆さまのご支援のおかげ。ようやく“未来に懐かしい田舎を残す”というプロジェクトの出発点に立つことができた」と話す。

 今後、施設周辺の景観を5年計画で整備していく。裏の森にはハンモックなどを設置し、静かな時を過ごすスペースを作る。ウッドデッキで食事やヨガをしたり、テントサウナなどのイベントを楽しめる庭も整備。更に施設の前にある360度のパノラマが展開する丘を整備し、満天の星を眺める場所にするという。

クラウドファンディング

 こうした景観整備の資金に充当するため、3月24日まで300万円を目標にクラウドファンディングを展開している。「趣旨に賛同される多くの方にご支援頂ければ」と田中さん。出資金(3000円以上)に応じて、特製ジェラートや施設でのディナー・ランチの招待券、宿泊割引券などのリターンが用意されている。詳細はホームページ(https://www.yatakiya.com)で発信している。

 同社では現在、調理補助や農園作業などのスタッフを募集している。大阪からUターンし、ヘルスツーリズムの資格を取得したスタッフの一人、上本美穂さん(26)は「懐かしい田舎生活を体感でき、心の癒やせる場所を提供できる事業に携われるのは面白く、やりがいを感じる。今後、定期的にイベントを企画し、フェイスブックなどで案内するので、ぜひお越しください」と話している。

 問い合わせは、やたきや(0745・85・3650)まで。

2022年3月12日付815号16面から

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