【「伊賀のカンジョウナワ行事」の一つで、市無形民俗文化財に指定された長田地区の大しめ縄とわら飾り(伊賀市教委提供)】

 三重県の伊賀市教育委員会は2月24日、流行病や災害などが入ってこないよう村境に大しめ縄をかける年頭行事「伊賀のカンジョウナワ行事」を市無形民俗文化財に指定したと発表した。今回の指定で市の文化財は287件、うち無形民俗は8件になった。

 文化財課によると、近畿地方の2府5県には滋賀や奈良を中心に341か所、市内では10か所で伝承されており、三重県内では名張市に1か所、明和町に3か所でカンジョウナワ行事が伝わる。今回は長田、菖蒲池、東谷、柘植町、中柘植、石川、西湯舟、中友田、槙山の9か所を指定した。市北部に分布が集中し、6か所が柘植川流域で過半数を占めている。

 伊賀地域ではわら飾り類をつるすのが特徴で、近畿地方の他では京都と奈良の木津川沿いにある地域に限定される。多いのが「ナベツカミ」「ナベシキ」の生活道具の他、豊穣を示す「サカダル」「タワラ」「タイ」といった縁起物で、呪術的な意味を持つ「タコ」「ウマ」をつるす地区もある。同じ古山地区にある菖蒲池と東谷では豊作を願った祈とう札をぶら下げる。

 カンジョウナワ行事の起源について、同課は地名や歴史学から近世以前に遡るとされ、中世の絵巻物や宗教的説話にも大しめ縄に呪符をつるす習俗が描かれていると説明。伊賀地域では、川をまたいでカンジョウナワを掛けるところがほとんどで、縄の長さは最短が約7メートル、最長が約80メートル。「外から災疫が入るのを防ぐ」や「村の福が流れないようにする」という理由が多く、豊作祈願や子孫繁栄の意味があるとする地区もあるという。

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