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スッキリしてる?【政務活動費】 広報費の支出巡り反省動議

「恣意的な違反」⇔「間違ってるなら返還請求を」

2015年度分名張市議会編 昨年マニュアル改正

 名張市議会の柏元三議員(72=無会派)が政務活動費の一部として支出した広報費に対し、議会運営委員長の福田博行議員(65=清風クラブ)が6月定例会最終日の28日、「マニュアルに順守していない」とし、反省を求める動議を提出した。採決では柏議員本人と森脇和德議長を除く18人のうち、14人が賛成し可決した。動議には法的効力はない。【反省を求める動議に賛成で起立する名張市議=名張市議場で、囲み写真の右下は福田議員、左下は柏議員】

 福田議員が問題視したのは、柏議員が広報紙の発行に要した印刷費や発送費、市政報告会の会場費として計上した40万4020円。議運委で決定した昨年7月改正の政務活動費マニュアルでは「政務活動以外の活動と混同される恐れがある」とし、経費全額の支出を認めず、各経費の3分の1を上限とした。

 福田議員は提案理由で「明らかに恣意的なマニュアル違反だと言わざるを得ない」と指摘し、柏議員に対し「不満や異議があるなら議運委で議論する時間があったにもかかわらず、行動を起こさなかった」と批判。質疑では「議運委の在り方を否定されている」と動議への賛同を求めた。

 採決で反対した議員は、質疑で「どれだけ話し合いの時間を持ったのか。互いの言い分で正しいところを見つけていくのが政治家だ」「広報の内容に基づいて3分の1というルールがある。中味そっちのけで『守れ』はおかしい」「市民から何をやっているんだと思われるのは目に見えている」などと意見した。賛成した議員からの質疑はなかった。

ルールではなく指南書

 柏議員は「マニュアルはルールではなく指南書」と主張。「議員は市税の使い方を監視し、市民意見を市政に反映させ、現状を知らせる責任がある。どこそこに視察へ行ったでは、政務活動費の使い方が市民に全く見えない」と反論した。【柏議員が発行した2015年度広報紙】

 違反の認識については「政務活動費以外が混在する場合は案分するとなっている。違反していない。反省もしない。(私が間違っているなら)返還請求すべき」と否定。「市民から訴えられた場合の被告は議員個人。他の議員が制限する権利は全くない。顛末(てんまつ)やいきさつを問い、市民の判断に委ねる」と述べた。

 採決の後、福田議員は取材に対し「反省しないのは命令ではないから構わない。ただ、残念なのは持論を述べるだけで建設的な意見がなかったこと。今後は政務活動費が市民の中で議論になればいいと思う」と答えた。

 伊賀市議会では政務活動費の使途基準などを決める場合、最終的に全員協議会で報告、了承された事項のみ採用や改正をしている。


宿泊伴う視察・研修あれこれ

TSUTAYA図書館 領土問題も

 名張市議会(定数20)が議員報酬とは別に調査研究活動などとして支給される2015年度政務活動費の収支報告をまとめた。交付額は960万円で、残額77万1546円は市に返還した。同年度分の資料は市役所1階の市民相談室で自由に閲覧できる。

 同市議会の政務活動費は会派支給で、議員1人当たり年間48万円。清風クラブの5人と心風会の4人、無会派の柏元三議員が交付額以上に支出し、自己負担した計18万7056円を除く議会全体の執行率は92%だった。

 9つの支出項目で最も割合を占めたのが調査研究費の約332万4千円だった。次いで研修費約265万9千円、事務機器購入などの資料作成費約115万1千円が多かった。

 宿泊を伴った視察や研修は全体で41件あり、各会派から選出された「ものづくり条例検討委員会」のメンバー5人は都内や静岡市を視察。清風クラブは都内や福岡県で開かれた佐賀県武雄市の樋渡啓祐前市長が講師を務める研修に参加した。同氏が在職中に手掛けた全国初の公設民営による「TSUTAYA図書館」の運営や教育改革を学ぶため、公明党の4人とともに武雄市にも赴いている。

 調査研究費で約140万5千円と他会派に比べて突出していた心風会の4人は、地域活性化で沖縄県石垣市に、ものづくりアクションプランで松江市を訪問した。領土問題も視察目的で、両県が抱える尖閣諸島と竹島に関連した施設や機関も訪れた。

 日本共産党の田北利治議員と春風会(15年9月解散)の山下登議員、当時無会派の足立淑絵議員も松江市を視察している。3人は町づくりと町おこしが目的だった。

 その他経費は約94万3千円。同市議会は政務活動費マニュアルを昨年7月に改正するまで、県内の市議会で唯一、携帯や固定の電話代の請求に対し領収書の添付なしで認め、1人につき月額5千円まで支出できた。

 改正後は添付を義務化。更に電話代を始め、自宅のパソコンや議会費で購入し議員全員に貸与しているタブレット端末のインターネット代などを「通信費」として同額内に収めるよう変更した。電話代の一部を支出したのは日本共産党の2人と川合滋議員、柏議員、山下議員を除く15人。貸与されたタブレット端末のネット代の一部は20人全員が充当した。

 同市議会の交付額は昨年9月の定例会で可決した特例条例案を受け、今年度分から改選まで月額で1万円少ない年36万円に減額している。

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