YOUが送るオンライン読み物「シアワセを感じる100歩」

「間違える」を楽しむ。

99.jpg

 早朝、電話が鳴った。
「何時開店ですか」
 まただ。
「うちは寿屋さん(仮名)じゃないですよ」
 市内の小売店と間違えてかかってくるのだが、顧客がシニア世代だからか、電話の相手もお年寄りばかりだ。
 この間違い電話が初めてかかったのは数年前。
「xx-1122にかけたんやけど?」
「うちは1112ですよ」
 と応じて以来、年1回程度間違い電話があった。
 それがここ2週間で3回である。

 3回目のとき、思った。
 この夏は暑い。
 お年寄りが番号どおりに押せないくらい暑い。
 私自身、叔父に電話して、物を貰ったお礼をひとしきり言ったら
「何の話です?」
 と聞き覚えのない声で返されたばかりだ。
(どこにかけたんだろう)
 皆、暑さにやられているんだなと思っていたのだが。

「寿屋さん?」
 4回目か。
 さすがに妙だ。
 間違いだと告げると
「何? 聞き取りにくうてね」とおばあさん。
「何番にかけましたか?」
 大きい声で言う。
「そんなん分かりません」
 何で?
「タップしただけやから」
 え?
「スマホに届くメルマガにある電話番号、押したらかかるでしょ。寿屋さんが書き間違えたんやね」

 ITの波はここまで来てるんだ!
 間違い電話でスマホの普及率を実感。
 そしてもう一つ。
 お年寄りだから、なんて思い込みは物事を見誤らせる。
 間違い電話でそんな間違いの元にも気付いたのだった。

「間違える」を楽しむ。のトップへ戻る
シアワセ感じる100歩のトップページに戻る

コメントする

執筆者・坪田多佳子プロフィール

1963年東京生まれ。ライター、小論文及び国語科専門プロ家庭教師。
「シアワセ感じる100歩。」は、2007年4月から2009年3月、朝日新聞の姉妹紙「RAKU(楽)」に掲載し、好評を得た。現在は「YOUよっかいち」の紙面と伊賀タウン情報YOUホームページで連載中。
日常生活で見つけた小さなシアワセをテーマに「~を楽しむ。」と題して1か月に1歩ずつ歩み続け、「100歩。」達成を目指す。
YOU紙面へはピンクリボンの記事も出稿。
趣味は読書、料理、英会話。インターネット上で、日本マニアの外国人に日本語を教えたりもしている。
家族は夫、息子、娘。松阪市在住。