YOUが送るオンライン読み物「シアワセを感じる100歩」

「不思議がる」を楽しむ。

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(あ、さっきの......)
 地下街の向うから男子学生4人組が歩いて来
る。
 地下鉄で、前の席に座っていた子たちだ。
(同じ駅で降りたんだ。気がつくかな?)
 1人が私を認めて目を丸くし、すれ違いざまに
「嘘やん!ありえねーよ」と漏らす。
 歩きながら背中に彼らの視線を感じ、ちらっと後ろを見たら、「何であのオバサンここに居るん?!」4人で激論を交わす様子が伺えた。

 種を明かそう。彼らとは、地下鉄の車内で顔を覚えてしまうくらいの区間、向き合っていた。
 そのうち私は本に夢中になって降りることをすっかり忘れ、(乗り過ごした!)と、停車駅で飛び降りた。
 ところがそこは一駅前。
 再度乗り込むのも気まり悪い。
 隣の車両に飛び乗って、一番前へ移動した。
 目的の駅に着き、地下街奧へと進んだが、手前の店での用事を思い出し、引き返したところだったのだ。
 彼らから見れば、前の駅で確かに降りたオバサンが、向うの方から歩いて来たという状況。
 イリュージョンマジックばりの人体移動というわけだ。
 しかし、事実は至極単純。
 案外、この世の奇怪な摩訶不思議も、からくりは単純なのかな、と思う。

 ところで、彼らは謎解きができただろうか。
 愉快な子たちだったから、「オバサン、2人居るんじゃね?」的なオカルト話になったかも。
 それだと不思議のままでいいのかな。
 「ありえねーよ」はあったほうが、人生、刺激的だから。

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執筆者・坪田多佳子プロフィール

1963年東京生まれ。ライター、小論文及び国語科専門プロ家庭教師。
「シアワセ感じる100歩。」は、2007年4月から2009年3月、朝日新聞の姉妹紙「RAKU(楽)」に掲載し、好評を得た。現在は「YOUよっかいち」の紙面と伊賀タウン情報YOUホームページで連載中。
日常生活で見つけた小さなシアワセをテーマに「~を楽しむ。」と題して1か月に1歩ずつ歩み続け、「100歩。」達成を目指す。
YOU紙面へはピンクリボンの記事も出稿。
趣味は読書、料理、英会話。インターネット上で、日本マニアの外国人に日本語を教えたりもしている。
家族は夫、息子、娘。松阪市在住。