YOUが送るオンライン読み物「シアワセを感じる100歩」

「片付ける」を楽しむ。

83.jpg
 納戸を片付けていたら、奥からダンボールが出てきた。中身は娘の古い人形たち。
 遊びながら、大きくなったらセーラームーンになる! と宣言していた娘も、4月から社会人だ。
 人形を取り出していくと、中に見るも哀れな人形がひとつ。
 長い金髪がざっくり切り落とされている。
 何て残酷な......と、うろたえた。
 可愛かった娘の面影が揺らぐ。
 どうにも気になるので、人形を並べて写真に撮って本人に送ることにした。

 「片付け中に人形たちが出てきました。でも1人、髪を切られた可愛そうな子がいる......」とメールする。
 すぐさま返信があった。
 「懐かしいなー。その子の髪? ......実はね、切ったら伸びると思ってたの」なんという発想。
 子どもは計り知れないものである。
 それなら長い髪に戻らず悲しい思いをしたかしら、などと想像していると、再度メールが。
 「今友だちと一緒にいて、この写真を見せたらね、」友人に髪を切った理由も話したようだ。
 「彼女に言われたわ。『伸びなくてよかったね』って」
 ......確かにね。

 思い出に浸っているうちに、日が暮れた。
 人形たちも納戸へ戻す。
 結局何も片付かず、教訓だけを得た。
 "片付けは、思い出深い物から始めてはいけません"
 しかし、一方でこうも思う。
 片付けられない物があることが、私はうれしいのだと。

「片付ける」を楽しむ。のトップへ戻る
シアワセ感じる100歩のトップページに戻る

コメントする

執筆者・坪田多佳子プロフィール

1963年東京生まれ。ライター、小論文及び国語科専門プロ家庭教師。
「シアワセ感じる100歩。」は、2007年4月から2009年3月、朝日新聞の姉妹紙「RAKU(楽)」に掲載し、好評を得た。現在は「YOUよっかいち」の紙面と伊賀タウン情報YOUホームページで連載中。
日常生活で見つけた小さなシアワセをテーマに「~を楽しむ。」と題して1か月に1歩ずつ歩み続け、「100歩。」達成を目指す。
YOU紙面へはピンクリボンの記事も出稿。
趣味は読書、料理、英会話。インターネット上で、日本マニアの外国人に日本語を教えたりもしている。
家族は夫、息子、娘。松阪市在住。