YOUが送るオンライン読み物「シアワセを感じる100歩」

「記憶する」を楽しむ。

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 大事なことは忘れるくせに、くだらないことばかり覚えているのはなぜだろう。
 常々不思議に思っていたが、「繰り返し思い出すと、記憶に残る」という話を聞いて納得した。
 馬鹿馬鹿しくても印象的な体験を、自分が何度も思い出しているからなのだ。


 中学時代まで遡っても「カリヤの打ち方」の記憶は鮮明だ。
 卓球部の新人部員となった私は、耳慣れないカタカナのフォームやルールを必死に覚えていた。
 ある時先生が「今日中にカリヤの打ち方をマスターしよう!」と言った。
 私を除く新人部員全員、カリヤの練習を始めたが、私だけその打ち方が分からない。
 同級生を真似してみてもダメだ。
 (まずい!部活が終わる!)
 焦った私は意を決し、横にいた先輩に小声で尋ねた。
 「先輩、カリヤって何ですか?」
 先輩は言った。
 「私の名前よ。刈谷だけど何?」
 カリヤの打ち方が、その刈谷先輩のような打ち方だと分かった瞬間の驚き。
 こみ上げる笑い。
 それを何度となく思い出しては楽しんだ。

 そうだ!もしかしたら、思い出し戦略で、留めたい記憶も選べるんじゃないか?
 嫌なことは敢えて思い出さずに薄れるのを待ち、楽しいことだけ意識的に思い出す。
 いや待てよ。
 すでにくだらない記憶だらけの脳内が、パラダイスになりそうだ。

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執筆者・坪田多佳子プロフィール

1963年東京生まれ。ライター、小論文及び国語科専門プロ家庭教師。
「シアワセ感じる100歩。」は、2007年4月から2009年3月、朝日新聞の姉妹紙「RAKU(楽)」に掲載し、好評を得た。現在は「YOUよっかいち」の紙面と伊賀タウン情報YOUホームページで連載中。
日常生活で見つけた小さなシアワセをテーマに「~を楽しむ。」と題して1か月に1歩ずつ歩み続け、「100歩。」達成を目指す。
YOU紙面へはピンクリボンの記事も出稿。
趣味は読書、料理、英会話。インターネット上で、日本マニアの外国人に日本語を教えたりもしている。
家族は夫、息子、娘。松阪市在住。