YOUが送るオンライン読み物「シアワセを感じる100歩」

「注意する」を楽しむ。

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 夜の9時。
 外出先から帰ろうと、エンジンをかけたがかからない。
 取説を見てもダメなので、JAFを呼んだ。
 真っ暗な住宅地にレッカー車で駆けつけたJAFの人が、車に乗り込む。
 私が「復旧までどれ位......」と尋ねようとした瞬間、エンジンのかかる音がした。
 「ハンドルロックでしたね!」
 その一言で、彼の作業は終了した。

 ハンドルを固定して盗難を防止する機能に持ち主自身が翻弄され、JAFまで呼ぶなんて。
 いつも運転するだけで、機能の細部に注意を向けないからこんなことになるのだ。
 動く凶器にもなる車。
 注意に注意を重ねなくては、と気を引き締めた。

 計器の周りにまで注意を払い始めたら、点滅するランプを発見した。
 今までの私なら見逃していただろう小さなサイン。
 異常を知らせる点滅に、すぐに気づいた自分を讃えつつディーラーへ急行し
 「車を停めたら、突然点滅しました」
 と整備の人に訴えた。
 だが彼は正常だと言う。
 点滅なのに?
 目を見張る私に「盗難防止機能作動中のサインです」と彼。
 またもや盗難防止!
 私は「注意しすぎて神経質になったかもしれません」と口走ってから自分の無神経さに気づく。
 盗難防止機能なら突然点滅したはずもなく......
 「お買い上げの3年前からエンジンを切る度に点いてます」
 ......注意力を鍛える旅に、ちょっと出たくなった。

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執筆者・坪田多佳子プロフィール

1963年東京生まれ。ライター、小論文及び国語科専門プロ家庭教師。
「シアワセ感じる100歩。」は、2007年4月から2009年3月、朝日新聞の姉妹紙「RAKU(楽)」に掲載し、好評を得た。現在は「YOUよっかいち」の紙面と伊賀タウン情報YOUホームページで連載中。
日常生活で見つけた小さなシアワセをテーマに「~を楽しむ。」と題して1か月に1歩ずつ歩み続け、「100歩。」達成を目指す。
YOU紙面へはピンクリボンの記事も出稿。
趣味は読書、料理、英会話。インターネット上で、日本マニアの外国人に日本語を教えたりもしている。
家族は夫、息子、娘。松阪市在住。