YOUが送るオンライン読み物「シアワセを感じる100歩」

「しゃべる」を楽しむ。

 50歳の誕生日が迫ってきた。半世紀ともなれば、昔より行く先が見通せるかと思ったが、案外見えない。
 そのため、人生の先輩方の言葉にヒントはないか?と、彼らの会話が妙に気になるこの頃である。

 親戚にはおしゃべり好きな老人が多い。
 思い出話に花を咲かせる様子を見ると、絶え間なくしゃべり、笑い、賑やかなことこの上ない。
 だが会話は穏やかなものばかりでもなく、キツイ物言いも混じる。
 「その話何回目? 何べんも聞いたわ!」
 言われたほうも黙ってはいない。
 「あー確かに言った。でもな、何回も言わなきゃ言った気にもならんやろっ!」
 なるほど。
 老人が何度も同じことを言うのは、内容を噛み締めているからなんだ、と傍らで納得するのだった。

 老人たちのおしゃべりは、時間をも越える。
 「そんな色の服、年寄りくさいわ。私には地味すぎや!」と90代が「年寄り」の定義を覆す。
 80代が「この間な」と、50年前の話をする。
 食事の最中には「食べるのホント速すぎ!」と批判された70代がこう切り返す。
 「そっちから見たらこっちが速いかもしれん。だけどこっちから言うとそっちが遅いだけやろ!」
 なんと自由な時間の流れ!
 彼らの会話を聞きながら、思った。
 たかだか半世紀の若輩者が、残りの時間をどうこう言うのもおこがましい話かな、と。

「しゃべる」を楽しむ。のトップへ戻る
シアワセ感じる100歩のトップページに戻る

コメントする

執筆者・坪田多佳子プロフィール

1963年東京生まれ。ライター、小論文及び国語科専門プロ家庭教師。
「シアワセ感じる100歩。」は、2007年4月から2009年3月、朝日新聞の姉妹紙「RAKU(楽)」に掲載し、好評を得た。現在は「YOUよっかいち」の紙面と伊賀タウン情報YOUホームページで連載中。
日常生活で見つけた小さなシアワセをテーマに「~を楽しむ。」と題して1か月に1歩ずつ歩み続け、「100歩。」達成を目指す。
YOU紙面へはピンクリボンの記事も出稿。
趣味は読書、料理、英会話。インターネット上で、日本マニアの外国人に日本語を教えたりもしている。
家族は夫、息子、娘。松阪市在住。