YOUが送るオンライン読み物「シアワセを感じる100歩」

「植える」を楽しむ。

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 新緑のまぶしい季節には、無性に植物を植えたくなる。
しかしうちの庭にはもうスペースがない。
新顔を入れるなら、繁殖中の植物を何とかするしかないか、と考えた。

 私が始末しようとしているのは、紫や白の清楚な花が咲くシランである。
スコップをザクッと入れるだけでも罪悪感。
本当にこれを雑草と一緒にゴミに出しちゃっていいのか?私。
いいや、思い切りが大事。
以前、通り道に生えたのを掘って庭の隅に捨てたら、捨てた所で花を咲かせた。
可愛い顔してしたたかな奴なのだ。ザクッ。
巨大化した球根の横には別の球根が何個も。
もしやこれは子ども?罪悪感が募る。
しかし根は花壇のレンガをくぐって伸びている。
これを野放しにしたら他の植物が全滅だ。許してシラン!私は心を決めた。
ザクザクッ。
球根の固さが半端なく、手が痛む。暫く奮闘し、終わった。
 数日後。さて何を植えようかと思っていたら、出かけていた夫が帰ってきた。
手には黒いビニールポット。
「不思議な球根があったんで、買ってきた。すごく固いんだ」
......固い?札に書かれた名は......まさかのシラン。
「私が苦労して掘り起こして、散々捨てたシランじゃないのっ!」
「おおそうか!どっかで見たなーとは思ったんだ」
脱力しつつ、チラと見ると、球根がニッと笑った気がした。

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執筆者・坪田多佳子プロフィール

1963年東京生まれ。ライター、小論文及び国語科専門プロ家庭教師。
「シアワセ感じる100歩。」は、2007年4月から2009年3月、朝日新聞の姉妹紙「RAKU(楽)」に掲載し、好評を得た。現在は「YOUよっかいち」の紙面と伊賀タウン情報YOUホームページで連載中。
日常生活で見つけた小さなシアワセをテーマに「~を楽しむ。」と題して1か月に1歩ずつ歩み続け、「100歩。」達成を目指す。
YOU紙面へはピンクリボンの記事も出稿。
趣味は読書、料理、英会話。インターネット上で、日本マニアの外国人に日本語を教えたりもしている。
家族は夫、息子、娘。松阪市在住。