YOUが送るオンライン読み物「シアワセを感じる100歩」

「没頭する」を楽しむ。

68.jpg  「仕事に繋がらない趣味にあれこれ手を出すなんて、時間とお金の無駄なんだって」Sがすっかりしょげている。
 趣味を仕事にして成功した人の話を聞いたのだと言う。
 多趣味なSにはグサリときたようだ。
 「目的意識がないからレベルも上がらないらしいよ......」
 目的意識。
 レベル。
 全然楽しくない。
 効率を考え出した時点で趣味ではなくなると思うので、「そんな意見に屈しちゃダメよ!」とSの多趣味を応援した。

 第一仕事に繋がらないなんて、リタイアした人の趣味を全力で否定するようなものだ。
 計算なく好きなことに没頭してこそ趣味だろう。

 定年後、カメラ、絵画、ピアノなど次々と趣味を広げている父が、今度は「裁縫をしたくなった」と買ったばかりのミシンを出してきた。
 ピンクの小型ミシンで、キティちゃんがついている。
 キティのミシンで裁縫とは想定外だ。
 「で、何を縫ったの?」と聞くと「な~んにも」どうして!?
 「上の糸と下の糸が、どういう仕組みで絡み合って縫われていくのかが気になって先に進まない」目的が全く別方向な模様だが、趣味に「裁縫」いや、「ミシン観察」が加わって、幸せそうな父である。

 ボビンケースを取り出して中を覗きこみ、父が何やらつぶやいた。
 「分解したいな~」......キティのためにも空耳であって欲しいものだ。

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執筆者・坪田多佳子プロフィール

1963年東京生まれ。ライター、小論文及び国語科専門プロ家庭教師。
「シアワセ感じる100歩。」は、2007年4月から2009年3月、朝日新聞の姉妹紙「RAKU(楽)」に掲載し、好評を得た。現在は「YOUよっかいち」の紙面と伊賀タウン情報YOUホームページで連載中。
日常生活で見つけた小さなシアワセをテーマに「~を楽しむ。」と題して1か月に1歩ずつ歩み続け、「100歩。」達成を目指す。
YOU紙面へはピンクリボンの記事も出稿。
趣味は読書、料理、英会話。インターネット上で、日本マニアの外国人に日本語を教えたりもしている。
家族は夫、息子、娘。松阪市在住。