YOUが送るオンライン読み物「シアワセを感じる100歩」

「確認する」を楽しむ。

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国語を教える仕事とは別に、ネットで外国人に日本語を教えている。
ただこちらはボランティアであることが多い。

今回、自分の文章を少しだけ見て欲しいと言うのは中国人の張さん。
日本人相手に中国人とのビジネスについて、プレゼンをするのだという。
プレゼンのチェックとは大層な話だが、少しだけならと引き受けた。



「まず、ホウレンソウです」
「野菜の話ですか」
「日本人がビジネスに必須だというホウレンソウ」
 ああ「報告・連絡・相談」の「報・連・相」か。
「あれは素晴らしい。でも中国にはない!」
「報告も連絡も相談も?」
「日本人からすれば、ないに等しい。そこをわかって仕事しましょうと言いたい。で、私が書いたのがこれです」
 送られてきたファイルを開けて驚く。
 な、長い......。

「さっき『少しだけ』って言ったのに!」
「そうおっしゃらずに。それにこれ、あなたが中国人とビジネスをするとき役立ちます」
 そんな計画はない。
 文句を言いながら始めたが、読んでみるとこれが案外面白く、気になる表現も。

「この『賞罰が必要』って?」
「日本人は打ち合わせのとき罰を与える話はしない。中国人には賞も罰も伝えたほうがいい」
「シビアね。『直接会ったときに確認、その場で確認』こう何度も『確認』と書いたのはなぜ?」
「中国人は日本人みたいに細かくメモを取りませんからね。
 意見の違いも丁寧に説明し、その場で確認することが大事」

 中国人とのビジネスに必須なのは「確認」で、「言うまでもない」は通用しないのだとか。
 日本語文を直しながら、他国とのビジネスは厳しいものだと経験もないのに思う。
 そろそろ終盤というとき、張さんが言った。
「さて次は『ビジネス社外編』」
「まだあるのっ?」
 しかしまた「社外編はお土産の話などです」に、うっかり興味を示してしまう私。
「中国人はたくさんお土産を買う。面子が大事なので皆に最高のものを買おうとするからです」
「会社にも?」
「もちろん。日本人ならクッキー1個ずつ、もアリでしょ?そんなのはあげないほうがマシ」

 同じアジア人でも大きく違う習慣や価値観。
 そんなことに感心しつつ、ようやく社外編もチェック完了。
 面倒な作業だったけれど楽しかったと伝えると、「それはよかった。ではついでに『番外編―飲み会での付き合い方』も」と張さん。
 ......彼の「少しだけ」がどれだけか、事前に「確認」すべきだったと、つくづく思うのであった。

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執筆者・坪田多佳子プロフィール

1963年東京生まれ。ライター、小論文及び国語科専門プロ家庭教師。
「シアワセ感じる100歩。」は、2007年4月から2009年3月、朝日新聞の姉妹紙「RAKU(楽)」に掲載し、好評を得た。現在は「YOUよっかいち」の紙面と伊賀タウン情報YOUホームページで連載中。
日常生活で見つけた小さなシアワセをテーマに「~を楽しむ。」と題して1か月に1歩ずつ歩み続け、「100歩。」達成を目指す。
YOU紙面へはピンクリボンの記事も出稿。
趣味は読書、料理、英会話。インターネット上で、日本マニアの外国人に日本語を教えたりもしている。
家族は夫、息子、娘。松阪市在住。