YOUが送るオンライン読み物「シアワセを感じる100歩」

「運転する」を楽しむ。

051.jpg車が苦手だ。
 運転中に方向がわからなくなるし、スピードが怖い。
「そのくせ何でスピード好きみたいな色の車にしたんだ?」と弟は言う。
 去年私は真っ赤な車を買った。
 でもそれは、前に乗っていたシルバーの車がよくある車種で、駐車場で停めた所を忘れると探すのに一苦労だったからだ。

 それに、施錠せずに停車していたら、家族の車と間違えた知らないおじさんが助手席に乗り込んできたことだってあるのだ。
 助手席の彼と驚愕の目で見つめ合ったあの一瞬。
 ああいう経験はもういい。
 だから赤にした。
 目立つ色なら他人も私も間違えない。

 スピードを出さない真っ赤な車は、高速でもどんどん抜かれる。
(皆私を抜いていくがいい!)と思いつつ運転しているが、彼らに料金所で追いつくのは小気味よい。
 高速は特にカーブが嫌だ。
 ハンドルが逸れたらどれ程の勢いで壁に激突するのか。
 だがその恐怖、何故か右より左カーブのほうがマシなのだ。
 ある時、理由を考えた。
「左に激突しても助手席の人がクッションになる。身体はそれが分かってるんだ」
 声に出していたらしい。
 助手席の友人が無口になった。

"自分をダメにする"とナビ反対派だったが、迷う回数が尋常ではなく、とうとうナビもつけた。
 でもこのナビがどうも不親切で、「目的地周辺です、ガイドを終わります」と勝手に終了する。

 周辺と言われても、ガイド終了後に迷う。
 先週は、そのせいでギリギリ通れるかどうかの路地に迷い込んだ。
(曲がれるかな......)と窓を開けて道幅をチェックしていたら、犬の散歩をしていたおばさんに「曲がれますとも!勇気を出しなさい」と激励された。
 私には勇気も足りない。

 課題を抱えたままの私に、運転を楽しむ日は来るのだろうか。

 最近、「運転中に道が覚えられない人の特徴」という記事を読んだ。
 いわく、「彼らは建物を見ず、動くものに興味を持ちます」
 その通り。
 私は歩行者とか動物が気になる。
「動くものは場所を変えるので目印にはなりません。だから道が覚えられないのです」
 行間から「目立つ建物を記憶するのが普通だろ?」という非難が聞こえる。

 しかし、だ。
 動くモノを認識するのはマイナスか?
 事故回避能力のあるってことでは?
 ついでに言えば、私のスピードに怯える運転も、慎重な運転ではないのか?
 絶対そうだ。
 私はセイフティードライバーなのだ!
 少しだけ楽しく......いや、楽になってきた。

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執筆者・坪田多佳子プロフィール

1963年東京生まれ。ライター、小論文及び国語科専門プロ家庭教師。
「シアワセ感じる100歩。」は、2007年4月から2009年3月、朝日新聞の姉妹紙「RAKU(楽)」に掲載し、好評を得た。現在は「YOUよっかいち」の紙面と伊賀タウン情報YOUホームページで連載中。
日常生活で見つけた小さなシアワセをテーマに「~を楽しむ。」と題して1か月に1歩ずつ歩み続け、「100歩。」達成を目指す。
YOU紙面へはピンクリボンの記事も出稿。
趣味は読書、料理、英会話。インターネット上で、日本マニアの外国人に日本語を教えたりもしている。
家族は夫、息子、娘。松阪市在住。