YOUが送るオンライン読み物「シアワセを感じる100歩」

「こだわる」を楽しむ。

50.jpg「ちょっと聞いて!」メルが興奮気味に言った。
 彼は、私がネットで時々日本語を教えている15歳のアメリカ人だ。
「今日、垣根を切っていて閃いたんだ」
「何を?」
「ルフィの技の名前!」
 ルフィとは、少年ジャンプの人気漫画「ONE PIECE」(ワンピース)の主人公だ。
 技というと「ゴムゴムの何とか」だろうか。
「それで?」
「考えたんだけどさ、『ゴムゴムのぉ~垣根をきる!』ってどう?日本人が聞いてかっこいい?」
 かっこ......よくもないかな。
 しかし特別に報告したい話が、想像上のルフィの技とはさすが世界のワンピース。
 熱狂的なファンはルフィの言葉に酔い、技にこだわると聞いてはいたが本当だった。

 さて、技の名前である。
 なぜイマイチなのか、説明を試みた。
「『ゴムゴムの垣根を切る』だと文章でしょ?技の名前なんだから名詞にしなきゃ。『垣根ぎり』とかね」
「そうか!『ゴムゴムのぉ~垣根ぎりぃ~』ホントだ!いいね!ん?でもどうして「切る」が「切り」になるの?それから何で「き」が「ぎ」に?」
 かくしてメルは、動詞の名詞化についての学習を始めたのであった。

 つまりこだわりは発見を生み、学習の機会をもたらすということだ。
 メルの他にも、独特のこだわりを持って日本語を独学している英国人がいる。
 彼の発音に外国人訛はない。
 日本文化に興味はなく日本に来たこともないが「日本語の音が美しい」と、言葉を丸ごと「音」として覚えていたら、いつの間にか日本語ネイティブになったらしい。
 こだわりは上達を促すのだ。

「質問があります」と、アメリカ人学生が言った。
 辞書に載っていない日本語があるそうだ。
「『だってばよ』とはどういう意味ですか?」
 ああ、またこの質問か。
 別の子にも同じことを聞かれた。
 ジャンプの漫画「NARUTOナルト」の主人公が、言葉の最後に付ける「~だってばよ」のことだ。
「それ、ナルトの口癖でしょ?」
「えっ?何でナルトってわかるんです?」
「ナルトしか使わないから」
「日本人は使わないの?」
「普通はね」
 しばらく考えてから彼は言った。
「ナルトはよく『だってばよ』を付ける」
「そうらしいね」
「でもどうして『だってばよ』になったの?」
 とことんナルトにこだわる彼。
「ボクはその理由が知りたい!!」
 時にこだわりは人を困らせる。
 そんなことは......「ナルトに聞いてください」

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執筆者・坪田多佳子プロフィール

1963年東京生まれ。ライター、小論文及び国語科専門プロ家庭教師。
「シアワセ感じる100歩。」は、2007年4月から2009年3月、朝日新聞の姉妹紙「RAKU(楽)」に掲載し、好評を得た。現在は「YOUよっかいち」の紙面と伊賀タウン情報YOUホームページで連載中。
日常生活で見つけた小さなシアワセをテーマに「~を楽しむ。」と題して1か月に1歩ずつ歩み続け、「100歩。」達成を目指す。
YOU紙面へはピンクリボンの記事も出稿。
趣味は読書、料理、英会話。インターネット上で、日本マニアの外国人に日本語を教えたりもしている。
家族は夫、息子、娘。松阪市在住。