YOUが送るオンライン読み物「シアワセを感じる100歩」

「理解する」を楽しむ。

047先月、久々に小学生の生徒を持つことになった。
 5年生の女の子、Kちゃんだ。
 2回目に会ったとき、赤外線通信で私のアドレスを携帯に送って欲しいと頼まれた。
「赤外線......どこ押すんだったかな」
 私がもたついていると、「やらせて~」とKちゃん。
「携帯の会社が違うのに出来るの?」
「うん。先生のは簡単なヤツだから」
 簡単なのか。
「あー先生、自分のアドレス登録してない。仕方ないな。じゃあこうやって」
 Kちゃんは、2台の携帯の上で滑るように指を動かし、あっという間に作業を終えた。

 機械や機器に私は滅法弱い。
 理解できないから説明書もロクに読まない。
 このままでは将来、何一つ使えないおばあさんになってしまう。
"新しい"ことには慣れなければ。
そこで、考えを改めることにした。

 買ったばかりのサイクロン掃除機があるので、まずは原理を調べてみる。
 サイクロンは、空気とゴミを遠心分離させる技術か。
 次は取り説。
 図を見ながら手順に従って組み立てたが、はまらない。
 手順3から2に戻りもう一度、と奮闘していたら、横で見ていた夫が「いや、こうだろう、普通」と、一瞬で完成させた。
 ......そんな馬鹿な。
 私はモノの構造すら理解できないのか。

 非常に焦る。
 ならば実践あるのみだ。
 浄水器本体の交換という課題もまだある。
 いつもなら夫に頼むところだが、自分で分解しよう。
 部品を1つずつばらし、新しいものに代えてもう一度組み立てる。
 割と簡単だ。
 しかしなぜ、部品の1つが余るのか。
 どこかおかしいともう一度分解したら、収拾がつかなくなった。
 30分以上格闘し、やっと浄水器の構造を理解する。
 全ての部品が収まって水が流れた瞬間、何かに打ち勝った気がした。

 さて、再びKちゃん指導の日。
 彼女の筆箱の中にバラバラになったシャープペンシルを見つけたので「何かなくなったら困るでしょ」と、組み立てようとしてまた躓いた。
 どうやるんだ? これ。
 Kちゃんは「そうじゃなくて、こう」素早く元通りにし、ニヤっと笑った。
 そして「先生、シャープペンシルって英語ですか?」と質問した。
 私は「英語ではメカニカルペンシル。機械的な鉛筆という意味......」と、自分で答えて絶句する。
 またしても機械か!
「メカ~ニカルペンシル」単語をすっかり気に入って連呼する彼女。
「メッカ~ニカルペンシィ~ル!」もういいよ、Kちゃん。
「メカ~ニカルッ!!」......私には、理解すべき対象がたくさんあるようだ。

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執筆者・坪田多佳子プロフィール

1963年東京生まれ。ライター、小論文及び国語科専門プロ家庭教師。
「シアワセ感じる100歩。」は、2007年4月から2009年3月、朝日新聞の姉妹紙「RAKU(楽)」に掲載し、好評を得た。現在は「YOUよっかいち」の紙面と伊賀タウン情報YOUホームページで連載中。
日常生活で見つけた小さなシアワセをテーマに「~を楽しむ。」と題して1か月に1歩ずつ歩み続け、「100歩。」達成を目指す。
YOU紙面へはピンクリボンの記事も出稿。
趣味は読書、料理、英会話。インターネット上で、日本マニアの外国人に日本語を教えたりもしている。
家族は夫、息子、娘。松阪市在住。