YOUが送るオンライン読み物「シアワセを感じる100歩」

「歩く」を楽しむ。

046.jpg昨年秋から、友人Mとウオーキングを始めた。
 出不精な上に根気がないので何をやっても長続きしなかったが、今回ばかりは継続の意欲満々。
 それは、友人Mの楽しげな提案のためだ。
「1週間に1回だけでもいいんじゃない?何もしないよりマシよ。それとランチもいっしょにどう?」
 心躍るプランに思えた。

 初めのころは、公園内のウオーキングコースを試した。
 コースの表示板にある理想的な所要時間を目安にすると、20分くらいで汗をかく。
 雑談三昧なので、1時間歩いても苦ではない。
 ウオーキング後の軽めの食事も楽しみだ。

ウオーキングの速度が分かったあとは、川べりなども歩いた。
 しじみとりのおじさんに、友達のように挨拶をする。
 自然の中を歩いていると、その土地に馴染んだ気分になるのだ。
 川には鴨もいた。
「つがいで泳いでいるのが多いね」とM。
 のどかな光景に和みかけたが、よく見ると、オス1羽の横にメスが2羽というのも。
「色々あるのよ、鴨も」と2人で納得する。
「メスが5羽っていう集団は?」
「さあ。色々あった挙句の女子会?」
 鴨社会の在り様を垣間見たような気がした。

寒さも増してきたので最近は、風を遮る建物がある街歩きに変えた。
 今度は「食事をする店」がゴールだ。
 ただ、街中だとつい寄り道も。
 先日は回転焼きの店に吸い寄せられた。
 餡を入れていたおばさんが「次、焼けるまで20分ほどかかります」と言うので注文をし、隣の靴屋で時間を潰していたら、何も買わないのに店の主人が福引の券をくれた。
 思いがけない幸運。
 犬も歩けば棒に、である。
 私たちは浮かれながら抽選会場に向かい、1等から順に賞品を確認。
 末等は、駄菓子。
 下から2番目は、今注文した「回転焼き」だ。
「確率的には末等よね」
「でも、こういう時に限って......」
 結局、2人揃って「回転焼き無料券」を当てる。
 幸運とはかくあるものなのか。

再び回転焼きの店へ。
「今、焼き上がりましたよ!」
「あの、これ当たっちゃって。追加です」
 おばさんが困った顔をした。
「それじゃ数が足りないわ。もう20分かかります」
 また待つの?
 すると「こうしましょう!」と彼女。
「ご注文分だけお渡ししますよ。当たり分の金額を差し引いてお支払いいただけばいいです」
 ありがとう、おばさん!

「食べるの早いわね~」とM。
 私は歩きながらカスタード味を頬張る。
「熱々がおいしいんだもん」
 取り戻した幸運は、素早く飲み込むに限るのだ。

「次は、雑誌に載ってたあの店を目指さない?」
 いつまでも続けられそうなお気楽ウオーキング。
 普段目に留まらないものが見えてくるのが面白い。
 こんなふうに「歩いている」と、頬に当たる冷たい風も、気にならない。

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執筆者・坪田多佳子プロフィール

1963年東京生まれ。ライター、小論文及び国語科専門プロ家庭教師。
「シアワセ感じる100歩。」は、2007年4月から2009年3月、朝日新聞の姉妹紙「RAKU(楽)」に掲載し、好評を得た。現在は「YOUよっかいち」の紙面と伊賀タウン情報YOUホームページで連載中。
日常生活で見つけた小さなシアワセをテーマに「~を楽しむ。」と題して1か月に1歩ずつ歩み続け、「100歩。」達成を目指す。
YOU紙面へはピンクリボンの記事も出稿。
趣味は読書、料理、英会話。インターネット上で、日本マニアの外国人に日本語を教えたりもしている。
家族は夫、息子、娘。松阪市在住。