YOUが送るオンライン読み物「シアワセを感じる100歩」

「案内する」を楽しむ。

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 「アイーダ! やっと会えたね」「コンニチワ! タカコ」ハンガリーから来日したアイーダ(詳しくは第35歩をご覧下さい)と、京都の某デパート内高級ブランド入口付近で待ち合わせをした(日本語が読めない人とも確実に会える。もちろん店の外)。

 常々「いつか行きたい国、ニッポン!」と言っていた彼女が、ついに日本国内1人旅を計画したのだ。旅行中、私と過ごすのは京都で1日、我が家で3日。私が案内人となる間は、ぜひとも楽しく過ごしてもらいたい。京都では、三十三間堂と清水寺へ行くことにした。

 常習的に道に迷うことも今回は封印しよう。私は「観光には市バス1日乗車券が便利よ」と旅慣れた様子をアピール。バス停まで3人に道を聞いたが「京都はバスが複雑でね」とごまかしたのでOKだろう。バスの中では車窓から町並みを説明しつつ、降りるタイミングを逃さぬようアナウンスに耳を済ませる。

 ようやく「次は三十三間堂前~」と聞こえたので一安心だ。「もうすぐよ。ほら、あれが三十三間堂」「ビューティフル!」高まる期待感。「あそこの仏像は圧巻でね」と話していると、アイーダが奇妙な声を上げた。「タカコ! 三十三間堂がどんどん後ろに!」バスの後方を指して慌てる彼女を見て、降車ボタンを押し忘れたことに気がついた。

 「本当にごめんね」次のバス停から歩いて戻りながら何度も謝り、「実は私、方向音痴の上にこんなことをよくやるの」と白状した。「まったく成長しないわ......」すると「そう? でも今のは子どもの逆でしょ」と彼女。「成長してるじゃない。だって、どんなボタンでも押したがるのが子どもだもん」と笑った。

 こうなったら、にわか知識を披露して面目躍如よ! と、お寺の門前で考える。だがそれも束の間、彼女が手にしたパンフレット英語版(結構詳しい)を前にあえなく断念。結局案内らしいことは何もせず、帰路に着くことに。それならせめて帰りは間違いのないように、と思っていたら「ね、来た道じゃなくこっちの道で戻ってみない?」と彼女が恐ろしいことを言った。高度すぎるリクエストだが、彼女の好奇心に負けてしぶしぶ承諾。そして案の定、バス停が分からなくなった。

 「アイーダ~、バス停がないよ......」彼女が立ち止まった。「平気よ。バスはたくさん通ってる。ここで見ていよう」それからバスが目の前を通り過ぎるのを見送って、遠くに止まるのを確認した。「ほら、あそこがバス停!」......この人、絶対どこでも生きていける、と確信したのだった。

 数日後、我が家を訪れた彼女と伊勢へ。でも他にどこを案内すれば? ふと思いついたのがアニメのフィギュアや漫画などがある店だ。アイーダは目を輝かせ、漫画を9巻から3冊購入。でも9巻? 「それ中途半端じゃない?」と聞くと、「いいの。英語で全部読んだから」ほー、英語版があるのか。「1巻からはハンガリー語版を持ってる」ハンガリー語版も? 「で、今回オリジナルの日本版!」完璧だね。

 日本を案内するなら、メインカルチャーもさることながらサブカルチャーは外せない。「あ、DVDもある!」彼女が店の奥に消えた。その店に、神社仏閣より長居をしたことは言うまでもない。

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コメント[1]

こんにちは。初めて書き込ませていただきますよっと。
タカコさんなら迷うんだろうなと思っていたらやはり。
迷ったことがあっさりバレるんだろうなと思っていたらやはり。
わーどうしようと内心焦っていても、きっと(誰かが)なんとかするんだろうな、と思っていたらやはり。
…あらゆる意味で期待通りです。ありがとう。

しかしイラストの方がお描きになったサブカルがセーラームーンってとこが、世代的にムフフですなw

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執筆者・坪田多佳子プロフィール

1963年東京生まれ。ライター、小論文及び国語科専門プロ家庭教師。
「シアワセ感じる100歩。」は、2007年4月から2009年3月、朝日新聞の姉妹紙「RAKU(楽)」に掲載し、好評を得た。現在は「YOUよっかいち」の紙面と伊賀タウン情報YOUホームページで連載中。
日常生活で見つけた小さなシアワセをテーマに「~を楽しむ。」と題して1か月に1歩ずつ歩み続け、「100歩。」達成を目指す。
YOU紙面へはピンクリボンの記事も出稿。
趣味は読書、料理、英会話。インターネット上で、日本マニアの外国人に日本語を教えたりもしている。
家族は夫、息子、娘。松阪市在住。