「分かる」を楽しむ。
「絶対うまくいくはずないって。あのカップル!」と、バイリンガルの友人Hが息巻いている。イギリス人の友人と、その日本人のガールフレンドについてのコメントのようだ。
一体、Hは何が気に入らないのか。
「そりゃ、初めは彼らを応援しようと思ったさ。だけどもう限界だね。オレを通訳として使いすぎる!」
だんだん話が見えてきた。
どうもそのカップルには言葉の壁があり、自分たちのデートの最中、Hの携帯に電話をしてきたという。
「何でオレが、愛のささやきまで訳さなきゃいけないんだよっ!」
ご立腹はもっともである。
一体、Hは何が気に入らないのか。
「そりゃ、初めは彼らを応援しようと思ったさ。だけどもう限界だね。オレを通訳として使いすぎる!」
だんだん話が見えてきた。
どうもそのカップルには言葉の壁があり、自分たちのデートの最中、Hの携帯に電話をしてきたという。
「何でオレが、愛のささやきまで訳さなきゃいけないんだよっ!」
ご立腹はもっともである。
「......とまあ、Hは言うわけよ。『相手の言うことも分からないで何が恋人だ!』って」。
私はその話を言語に詳しいSに向けてみた。
Sはフフっと笑い、「そうだね。分かろうと努力しなくちゃ、何も分からないよね」。
確かにそれは、どんなカップルにも言えることだろう。
「私の周りにも似たような人たちがいるわ」とS。
「彼らは努力してるし、すごくいい雰囲気」。
同じくイギリス人男性と日本人女性のカップルだそうだ。
「だけど......」
だけど?
「やっぱりお互いに何を話しているか、はっきりとは分かってないみたいよ」。
私はその話を言語に詳しいSに向けてみた。
Sはフフっと笑い、「そうだね。分かろうと努力しなくちゃ、何も分からないよね」。
確かにそれは、どんなカップルにも言えることだろう。
「私の周りにも似たような人たちがいるわ」とS。
「彼らは努力してるし、すごくいい雰囲気」。
同じくイギリス人男性と日本人女性のカップルだそうだ。
「だけど......」
だけど?
「やっぱりお互いに何を話しているか、はっきりとは分かってないみたいよ」。
不思議だ。
そんな2人にどうやって愛が芽生えたのか。
「大丈夫なの? 彼ら」。
「何とかなるでしょ。それにね」と、Sは続けた。
「逆に分からないほうがいいってことも、あるんじゃない?」
......Sはときどき意味深いことを言う。
「分かろうと努める。分からないでもよしとする」
Sの言葉を受け、我が身を振り返ってみた。
そんな2人にどうやって愛が芽生えたのか。
「大丈夫なの? 彼ら」。
「何とかなるでしょ。それにね」と、Sは続けた。
「逆に分からないほうがいいってことも、あるんじゃない?」
......Sはときどき意味深いことを言う。
「分かろうと努める。分からないでもよしとする」
Sの言葉を受け、我が身を振り返ってみた。
少し前のことだ。
「お話中、ちょっといい?」と、娘が夫と私の会話を遮った。
「お父さんとお母さんの話、どこでどう噛み合って進んじゃってるのかなあ」と言う。
「2人とも、まったく別の話をしてるんだけど、気づいてる?」
別の話?
「お父さんが言ってるのはマングローブ。森だよね」。
え?
「お母さんの頭にあるのはマングースでしょ? それ、動物」。
ああそうか......。
長いこと夫婦でいると、相槌の打ち方も適当になるようだ。
夫とは興味の対象が異なることが多いが、やはり受け答えくらいきちんとしよう。
「分かろうと努める」。
これだ。
私はそれを心に刻むことにした。
......はずだった。
「お話中、ちょっといい?」と、娘が夫と私の会話を遮った。
「お父さんとお母さんの話、どこでどう噛み合って進んじゃってるのかなあ」と言う。
「2人とも、まったく別の話をしてるんだけど、気づいてる?」
別の話?
「お父さんが言ってるのはマングローブ。森だよね」。
え?
「お母さんの頭にあるのはマングースでしょ? それ、動物」。
ああそうか......。
長いこと夫婦でいると、相槌の打ち方も適当になるようだ。
夫とは興味の対象が異なることが多いが、やはり受け答えくらいきちんとしよう。
「分かろうと努める」。
これだ。
私はそれを心に刻むことにした。
......はずだった。
「宇宙かあ。技術の革新は目覚しいんだろうね」。
宇宙にはあまり興味はないが、そんな風に答えつつ、夫の話を聞いていた。
彼は新聞を読みながら、話を続けている。
私は(地球に戻ってきておいしそうにりんごを食べていたな、野口さん)などと思う。
「信じられないよな、あんなに長いこと宇宙にいたなんて」と、夫。
「そうだよねえ、長いわー」。
「なんたって、7年ぶりだぞ」。
「うそ? 7年も宇宙にいたの? 野口さん?」
「......野口さんじゃなくて、探査機『はやぶさ』だ」
宇宙にはあまり興味はないが、そんな風に答えつつ、夫の話を聞いていた。
彼は新聞を読みながら、話を続けている。
私は(地球に戻ってきておいしそうにりんごを食べていたな、野口さん)などと思う。
「信じられないよな、あんなに長いこと宇宙にいたなんて」と、夫。
「そうだよねえ、長いわー」。
「なんたって、7年ぶりだぞ」。
「うそ? 7年も宇宙にいたの? 野口さん?」
「......野口さんじゃなくて、探査機『はやぶさ』だ」
結局今日も、いい加減な会話が進んでいた模様だ。
夫は呆れたように私を見て言った。
「野口さんは半年だ。7年いたら歳とりすぎて、さすがにまずいだろ?」
......彼の発言の真意は、「分からなくてもよし」としたい。
夫は呆れたように私を見て言った。
「野口さんは半年だ。7年いたら歳とりすぎて、さすがにまずいだろ?」
......彼の発言の真意は、「分からなくてもよし」としたい。


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