「旅する」を楽しむ。
息子がケチになった。仕送りの食費を切り詰め、アルバイトを探し、お金を貯めている。
なんでも、「就職する前の一人旅」のためなのだそうだ。
親子は似るものだなと思った。
私も大学生の頃、同じことをした。
節約をし、アルバイトを増やして、ドイツ行きの航空券を手に入れた。
ケルンの大学に通う友人Aを訪ね、下宿に居候をしたあの夏。
何もかも鮮明に覚えている。
中でも一番の思い出は、世界屈指の高速道路、アウトバーンにある。
私も大学生の頃、同じことをした。
節約をし、アルバイトを増やして、ドイツ行きの航空券を手に入れた。
ケルンの大学に通う友人Aを訪ね、下宿に居候をしたあの夏。
何もかも鮮明に覚えている。
中でも一番の思い出は、世界屈指の高速道路、アウトバーンにある。
ミュンヘン行きの計画を立てたAと私。
アウトバーンを彼女の赤い車で走った。
制限速度がないのでどの車も凄まじく速く、レーシングカーのような音がする。
それに比べAの車は亀だ。
「ゆっくりすぎない?」と聞くと、「これ以上スピード出ないの」とA。
「これ、車種は何?」
「ラビット」。
冗談としか思えないが本当だった。
アウトバーンを彼女の赤い車で走った。
制限速度がないのでどの車も凄まじく速く、レーシングカーのような音がする。
それに比べAの車は亀だ。
「ゆっくりすぎない?」と聞くと、「これ以上スピード出ないの」とA。
「これ、車種は何?」
「ラビット」。
冗談としか思えないが本当だった。
パーキングエリアに入った。
ヒッチハイクを求める人たちが大勢いる。
私がじっと見ているとAは、「珍しい?それなら......」窓を開けてドイツ語で何か言った。若い男が近づいてくる。
「ミュンヘンまでだって」。
彼が後部座席に乗り込んだ。
そういう文化なのか。
「ヒッチハイカー、よく乗せるの?」
「初めてよ」。
え......。
ヒッチハイクを求める人たちが大勢いる。
私がじっと見ているとAは、「珍しい?それなら......」窓を開けてドイツ語で何か言った。若い男が近づいてくる。
「ミュンヘンまでだって」。
彼が後部座席に乗り込んだ。
そういう文化なのか。
「ヒッチハイカー、よく乗せるの?」
「初めてよ」。
え......。
「兵士なんだって」。
Aは彼の仕事を尋ねたようだ。
当時、東西に分断されていたドイツ。
ベルリンの壁を彼は西側で守っているらしい。
すごい。
ところでラビット号、さっきより一層遅くなってないか?
スピードメーターを見る。
何か変。
「速度どれくらい?」
「さあ。メーター壊れちゃったみたい」。
不安がつのる。
Aは彼の仕事を尋ねたようだ。
当時、東西に分断されていたドイツ。
ベルリンの壁を彼は西側で守っているらしい。
すごい。
ところでラビット号、さっきより一層遅くなってないか?
スピードメーターを見る。
何か変。
「速度どれくらい?」
「さあ。メーター壊れちゃったみたい」。
不安がつのる。
雨が降ってきた。
土砂降りだ。
「大変!」Aが叫んだ。
「水が入ってきた!」信じられない。
足元が水浸しだ。
「足を上げてて!」
いや、そんな問題じゃ......。
「雨が止んだら、掻き出そう」とA。
「そうだね......」。
私は力なく答えた。
「あ~!」
再び叫ぶ彼女。
今度は何?
「あああ、だめだわ」。
ウソ!
ラビット号が止まった?
アウトバーンでエンスト?
あまりの事態に私が呆然としていると、Aは「ちょっと電話探してくるわ」。と、雨の中アウトバーンを歩き出した。
土砂降りだ。
「大変!」Aが叫んだ。
「水が入ってきた!」信じられない。
足元が水浸しだ。
「足を上げてて!」
いや、そんな問題じゃ......。
「雨が止んだら、掻き出そう」とA。
「そうだね......」。
私は力なく答えた。
「あ~!」
再び叫ぶ彼女。
今度は何?
「あああ、だめだわ」。
ウソ!
ラビット号が止まった?
アウトバーンでエンスト?
あまりの事態に私が呆然としていると、Aは「ちょっと電話探してくるわ」。と、雨の中アウトバーンを歩き出した。
アウトバーンの上。
狭い車内。
ドイツ人兵士と二人きり。
日本語も英語もわからない彼。
ドイツ語のわからない私。
沈黙。
空気が重い。
どうしよう。
突然、彼がドイツ語で何か言った。
必死な形相だ。
「わかりません!」
帰ってきて! A!
彼は身を乗り出し、私を指して何か訴えている。
怒ってるの?
彼が立ち上がる。
(待って、私は何も!)
すると、彼、車から降りて外に出た。
どこ行くの?
......車が揺れた。
見ると、私を乗せたまま彼が車を押しているではないか。
道を塞いでいたのを、道路の端に寄せてくれたのだ。
狭い車内。
ドイツ人兵士と二人きり。
日本語も英語もわからない彼。
ドイツ語のわからない私。
沈黙。
空気が重い。
どうしよう。
突然、彼がドイツ語で何か言った。
必死な形相だ。
「わかりません!」
帰ってきて! A!
彼は身を乗り出し、私を指して何か訴えている。
怒ってるの?
彼が立ち上がる。
(待って、私は何も!)
すると、彼、車から降りて外に出た。
どこ行くの?
......車が揺れた。
見ると、私を乗せたまま彼が車を押しているではないか。
道を塞いでいたのを、道路の端に寄せてくれたのだ。
「お待たせ~。修理の人、すぐ来るよ」。
Aが戻ってきた。
私は泣きそうになりながら、彼の活躍を説明。
Aは彼に笑いかける。
「ダンケ~(ありがとう)」。
Aは逞しい。
Aが戻ってきた。
私は泣きそうになりながら、彼の活躍を説明。
Aは彼に笑いかける。
「ダンケ~(ありがとう)」。
Aは逞しい。
雨が止んだ。
修理の人が来てラビット復活。
車内の水も掻き出し、再び走り始めた。
そしてついにミュンヘン到着。
兵士が車を降り、手を振る。
彼を見送りつつ、私は(何とかなるものね、何事も)と考えていた。
修理の人が来てラビット復活。
車内の水も掻き出し、再び走り始めた。
そしてついにミュンヘン到着。
兵士が車を降り、手を振る。
彼を見送りつつ、私は(何とかなるものね、何事も)と考えていた。
息子が目を輝かせて旅の話をしている。
「壮大な計画なんだ」。
そう、計画も楽しみの一つ。
でもね。
(計画通りにはいかないものよ)
と母は思う。
あえてそれを君に言わないでおこう、とも。
「壮大な計画なんだ」。
そう、計画も楽しみの一つ。
でもね。
(計画通りにはいかないものよ)
と母は思う。
あえてそれを君に言わないでおこう、とも。


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