YOUが送るオンライン読み物「シアワセを感じる100歩」

「知る」を楽しむ。

35.jpg昨年、ハンガリーに住む女性からメールをもらった。
「私の町には日本語を学ぶ所がありません。教えてくれませんか?」
ハンガリーというと、東側だった国。首都はブダペスト。オーストリアの隣で、それから......あまり知らない。
しかし何でハンガリーの女性が日本語を?湧き上がる疑問を書いて返信した。
何度かメールを交わすうち、ヨーロッパでは頻繁に日本文化が紹介され、それが日本語への興味につながったと分かった。
しかし私はあちらのことを何も知らない。日本にとっての「外国」が、米国一辺倒だったからよね。誰かの発言を引き合いに、自分の無知を棚上げすることにした。

彼女の名はアイーダ。
私より2歳年上で、ハンガリー語、ルーマニア語、フランス語、英語を話し、通訳と英語講師の仕事をしている。
彼女の話は面白い。
ベルリンの壁崩壊前の東側諸国の暮らしなど、馴染みのないことも聞ける。
今ではすっかり友だちで、時折ネットで世間話をするようになった。

「『サムライ7』って知ってる?」アイーダが言った。
何??
「『七人の侍』がベースの日本アニメ。いい作品よ」。
そして次々とアニメのタイトルを挙げた。
私が驚くと「昔、ルーマニアに住んでいた時は『アルプスの少女ハイジ』をよくみたわ」と言う。
「ヨーロッパにいて日本アニメのハイジなの?原作じゃなくて?」
再び驚く私。
ハイジは本場にも輸出されていたのか。それも30年近く前に。
「日本アニメはヨーロッパではずっとポピュラーなの」。
そうなんだ。
「でも違和感なかった?アルプスの少女なのに」。
「全然。私、ハイジは日本人だと思っていたし」。
「何で?」
「日本語を話すから」。
字幕つきだったらしい。
 
結局、いいものはどこでも受け入れられるということだ。
彼女は「アニメのおかげで仕事がしやすい」と言う。
各国の学生に教えるので、若い子の興味のリサーチは欠かさない。
そしてその「共通語」がアニメだそうだ。
私は「異文化理解といって、文化の違いを探してる場合じゃないってわけね」とまとめた。
我ながらいい事を言う。
得意になっていると「でも『違い』は知っておかなくちゃ」と彼女。
私の発見を軽く粉砕した。

「例えば、時間の観念」。
考え方の違いを知らなくては腹が立つらしい。
様々な国に知人がいるアイーダは、経験に基づく各国の印象を語った。
「待ち合わせが9時なら」人にもよるけど、と前置きをし「フランス人は9時10分か20分に来る」。
「イギリス人は?」
「だいたい定刻。それに他国の人がルーズでも寛容」。
「なぜ?」
「植民地にしてたから」。
ジョークだろうか。難しいので触れない。
「イタリア人は?」
「9時45分に来てもほっとしてる。10時にならなくて良かったって」。
南欧の知人だと、1時間の遅れは承知の上らしい。
嫌だな、それ。
「そんなの承知したくないし、激怒したい」と私。
ついでに「ヨーロッパには住めない」と主張した。
「そうなの?でもドイツ人だったら」とアイーダは続けた。
「9時ちょうどに来るわ」。
おお!ヨーロッパにも同類がいるじゃないか。
「日本人と同じ感覚ね!」と言うと、彼女いわく「それは違うわ」。
どうしてよ。

「日本人が来るのは8時50分でしょ」。

......ああ、そうか。ここでまた思う。
相手を知るにはまず、己を知れ。

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執筆者・坪田多佳子プロフィール

1963年東京生まれ。ライター、小論文及び国語科専門プロ家庭教師。
「シアワセ感じる100歩。」は、2007年4月から2009年3月、朝日新聞の姉妹紙「RAKU(楽)」に掲載し、好評を得た。現在は「YOUよっかいち」の紙面と伊賀タウン情報YOUホームページで連載中。
日常生活で見つけた小さなシアワセをテーマに「~を楽しむ。」と題して1か月に1歩ずつ歩み続け、「100歩。」達成を目指す。
YOU紙面へはピンクリボンの記事も出稿。
趣味は読書、料理、英会話。インターネット上で、日本マニアの外国人に日本語を教えたりもしている。
家族は夫、息子、娘。松阪市在住。