「当てる」を楽しむ。

自転車を買った。
壊れてしまった先代を2年前に見送って以来、どこへ行くにも車だった。
自転車を買う気にさせたのは、最近免許を取った知人のこの発言。
「自転車をやめて車にしたら腰痛になったわ。運動不足ね」。
腰痛と運動不足。
そのまま私に当てはまる。
決めた! 今後は極力自転車を使おう。さようなら、車!
というわけで、新しい自転車の初乗りとなった。まずは薬局へ行きたい。薬局の抽選会が、今日までなのだ。
壊れてしまった先代を2年前に見送って以来、どこへ行くにも車だった。
自転車を買う気にさせたのは、最近免許を取った知人のこの発言。
「自転車をやめて車にしたら腰痛になったわ。運動不足ね」。
腰痛と運動不足。
そのまま私に当てはまる。
決めた! 今後は極力自転車を使おう。さようなら、車!
というわけで、新しい自転車の初乗りとなった。まずは薬局へ行きたい。薬局の抽選会が、今日までなのだ。
抽選は好きだ。
純粋に「当てる」ことを楽しめるから。
顧客サービスの「抽選」は、一攫千金の欲望渦巻くギャンブルとは別物だ。
投資をしないので外れても平気。
だから、隣で誰かが当たりを引くのを見るのも案外面白い。
近頃はコンピューターの抽選もあるけれど、やっぱり一番は昔からある木製で八角形のものだろう。
何でもあれは「新井式回転抽選器」というらしい。
帽子屋の新井さんが抽選会を企画した時、八角形の帽子の箱で作ったのだとか。
誰でも参加OKじゃなく、購入金額に応じて権利を得る公平さがいい。
ハンドルを回すと箱の中の玉が音をたて、自分の手で運をつかめそうなのもいい。
新井さん式こそまさに「福引」だ。
福引には鮮明な思い出がある。
子どもの頃、親にもらった券5枚を手に、商店街に一人で引きに行った。
ハンドルを回して出た玉は、5つのうち2つが違う色。
鐘がいきなり盛大に鳴り、商店街のおじさんが「1等と3等だ!」と叫んだ。
歓喜に包まれる私。
すぐさま賞品を訊ねた。
おじさんは景気よく「1等、マットレス! 3等、洗濯ものハンガー!」と言った。
が、私の顔に落胆の色を見たのだろう。
「高級だよ」と付け足した。
布団と洗濯ばさみ(高級)を当ててから何十年も経つが、あれからさっぱり鐘の音を聞かない。
さて、新しい自転車は、というと快適そのもの。
肌で空気を感じながら「福引」を目指す。
薬局に着くと、さっそく男性店員に抽選券を渡した。
驚くほど口数が少ない彼は「3回どうぞ」と言ったっきり無言だ。
私はハンドルを回す。
久しぶりの感触にどきどきする。
黙って見つめる店員。
何か緊張する。
回してるのに玉も一向に出ない。
すると彼は気だるそうに「それ、逆回しです」と言った。
そう、昔も同じように注意をされたっけ。
何年経っても人って同じことを繰り返すのね......と考察しつつ、正しく3回、回す。
出た玉は、赤、黄、赤。
・・黄色?「トイレットペーパーですね」。
彼が小声で言う。
当たった?! トイレットペーパーでもうれしい。
「車で来られましたよね?」と彼。
「いいえ、でも自転車のかごに入れますから」。
彼は首を横に振った。
「ムリですね」。
そして店の奥に行き、賞品を運んできた。
彼の肩には巨大ダンボール。
中には96ロールのトイレットペーパーが。
鐘が鳴らないので分かりにくいが、大当たりだ。
「うれしい!」と私が言うと、彼はようやく微笑んだ。
私は手ぶらで帰り、結局、自転車初日から車を出動。
でも、この大量のトイレットペーパーをどうする?
運んだものの収納場所がない。
とりあえず床の間に置いてみた。
掛け軸の前の96ロール。
若干異様だが、そのままでもいいかな。
当たり福なので。
純粋に「当てる」ことを楽しめるから。
顧客サービスの「抽選」は、一攫千金の欲望渦巻くギャンブルとは別物だ。
投資をしないので外れても平気。
だから、隣で誰かが当たりを引くのを見るのも案外面白い。
近頃はコンピューターの抽選もあるけれど、やっぱり一番は昔からある木製で八角形のものだろう。
何でもあれは「新井式回転抽選器」というらしい。
帽子屋の新井さんが抽選会を企画した時、八角形の帽子の箱で作ったのだとか。
誰でも参加OKじゃなく、購入金額に応じて権利を得る公平さがいい。
ハンドルを回すと箱の中の玉が音をたて、自分の手で運をつかめそうなのもいい。
新井さん式こそまさに「福引」だ。
福引には鮮明な思い出がある。
子どもの頃、親にもらった券5枚を手に、商店街に一人で引きに行った。
ハンドルを回して出た玉は、5つのうち2つが違う色。
鐘がいきなり盛大に鳴り、商店街のおじさんが「1等と3等だ!」と叫んだ。
歓喜に包まれる私。
すぐさま賞品を訊ねた。
おじさんは景気よく「1等、マットレス! 3等、洗濯ものハンガー!」と言った。
が、私の顔に落胆の色を見たのだろう。
「高級だよ」と付け足した。
布団と洗濯ばさみ(高級)を当ててから何十年も経つが、あれからさっぱり鐘の音を聞かない。
さて、新しい自転車は、というと快適そのもの。
肌で空気を感じながら「福引」を目指す。
薬局に着くと、さっそく男性店員に抽選券を渡した。
驚くほど口数が少ない彼は「3回どうぞ」と言ったっきり無言だ。
私はハンドルを回す。
久しぶりの感触にどきどきする。
黙って見つめる店員。
何か緊張する。
回してるのに玉も一向に出ない。
すると彼は気だるそうに「それ、逆回しです」と言った。
そう、昔も同じように注意をされたっけ。
何年経っても人って同じことを繰り返すのね......と考察しつつ、正しく3回、回す。
出た玉は、赤、黄、赤。
・・黄色?「トイレットペーパーですね」。
彼が小声で言う。
当たった?! トイレットペーパーでもうれしい。
「車で来られましたよね?」と彼。
「いいえ、でも自転車のかごに入れますから」。
彼は首を横に振った。
「ムリですね」。
そして店の奥に行き、賞品を運んできた。
彼の肩には巨大ダンボール。
中には96ロールのトイレットペーパーが。
鐘が鳴らないので分かりにくいが、大当たりだ。
「うれしい!」と私が言うと、彼はようやく微笑んだ。
私は手ぶらで帰り、結局、自転車初日から車を出動。
でも、この大量のトイレットペーパーをどうする?
運んだものの収納場所がない。
とりあえず床の間に置いてみた。
掛け軸の前の96ロール。
若干異様だが、そのままでもいいかな。
当たり福なので。


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