「聞く」を楽しむ。
今年私はアダム・ランバートのファンになった。デビュー前の彼がテレビで歌っているのを偶然見て、抜群の歌唱力に衝撃を受けたのだ。その彼がついにファーストアルバムを出すという。
当然私は大興奮だ。
会う人会う人にそれを伝えているが、どうもうまくいかない。
「アダム・ランバートがね......」と言うと、「誰それ。知らない」。
話が続かないのだ。
まあそうだろう。聞いたこともない歌手Aについて語られても、コメントの仕様がない。
ああ、それでもやっぱり語りたい! 聞き手はきっとどこかに......と、思う日が続く。
誰もが知る話題なら、聞き手を探すのも簡単だ。しかし、知る人が限られているとそうはいかない。数年前に出会ったあの人たちも、私のような状況にあったんだろうなと、今思う。
あの人たちとは、世界の中の「ニッポン」マニア。彼らが自国で日本を語るとなると、特殊な話題になるらしい。
彼らを私に紹介したのは友人H 。「『日本を語る』っていうネットのコミュニティーがあるんだ。参加してよ」と、難しそうなことを言った。
だがよく聞くと単なるチャットルーム。日本マニアの外国人が集っているだけみたい。
「日本人に来て欲しいんだって。日本語と英語両方使う人もいるから、英語を勉強できるよ。タダで」。
私は参加を決めた。
あの人たちとは、世界の中の「ニッポン」マニア。彼らが自国で日本を語るとなると、特殊な話題になるらしい。
彼らを私に紹介したのは友人H 。「『日本を語る』っていうネットのコミュニティーがあるんだ。参加してよ」と、難しそうなことを言った。
だがよく聞くと単なるチャットルーム。日本マニアの外国人が集っているだけみたい。
「日本人に来て欲しいんだって。日本語と英語両方使う人もいるから、英語を勉強できるよ。タダで」。
私は参加を決めた。
「日本人の方ですか? やったあ!」
チャットルームに入ると、部屋の人たちがどよめいた。大歓迎ぶりにうろたえていると、いきなり質問責めに。
「黒澤監督作品○○の○○のシーンどう思う?」
......え?
「根付ってクールだよね。その歴史に詳しい?」
......私は「わかりません」を連発。面目ない。そのうち彼らは質問を諦め、語りに転じた。
忍者の忍術、ドラゴンボール、盆栽、だしの取り方......云々。内容がどれもピンポイントすぎて面白い。私は聞き役に徹したが、これだけは言っておいた。
「カツオだしは取れます」。
すると、トルコ人男性が「日本は好きだ。でも日本食は食べない」と言う。
何で?
「だって日本人って生っぽいものを食べるんだろう?」
刺身のことかな。
「トルコでは生の魚は食べないの?」と聞くと、「トルコ人は、きちんと料理する」。
何か誤解があるようだ。
チャットルームに入ると、部屋の人たちがどよめいた。大歓迎ぶりにうろたえていると、いきなり質問責めに。
「黒澤監督作品○○の○○のシーンどう思う?」
......え?
「根付ってクールだよね。その歴史に詳しい?」
......私は「わかりません」を連発。面目ない。そのうち彼らは質問を諦め、語りに転じた。
忍者の忍術、ドラゴンボール、盆栽、だしの取り方......云々。内容がどれもピンポイントすぎて面白い。私は聞き役に徹したが、これだけは言っておいた。
「カツオだしは取れます」。
すると、トルコ人男性が「日本は好きだ。でも日本食は食べない」と言う。
何で?
「だって日本人って生っぽいものを食べるんだろう?」
刺身のことかな。
「トルコでは生の魚は食べないの?」と聞くと、「トルコ人は、きちんと料理する」。
何か誤解があるようだ。
あるベトナム人女性は「私はスキヤキを作りたい」と、すき焼きついて熱弁をふるった。が、最後に「でも、スキヤキってどんな味なんだろう」。
すき焼きを知らずして何故すき焼き?
「日本が好きだから人気の料理を作りたいの」。
うれしくなる。私の知らないニッポンを、たっぷり聞けたひとときだった。「聞く」って確かに難しい。「聞く技術」などの指南書があるのもそのためだ。でも、相槌の打ち方はこう、なんて考えるより「聞く楽しみ」に浸ってしまう方がずっといい。
すき焼きを知らずして何故すき焼き?
「日本が好きだから人気の料理を作りたいの」。
うれしくなる。私の知らないニッポンを、たっぷり聞けたひとときだった。「聞く」って確かに難しい。「聞く技術」などの指南書があるのもそのためだ。でも、相槌の打ち方はこう、なんて考えるより「聞く楽しみ」に浸ってしまう方がずっといい。
さて、次なる「アダムの歌はすごいの!」のターゲットは友人K。彼女の答えはこうだった。
「どんな風に? 待って、名前メモするわ」。
そして綴りまで聞く。
「ゆっくり言って。Adam Lambertね」。
この反応! 私が彼女を好きな理由のひとつがこれだ。彼女を前に大いに語る私。Kは興味津々な様子で聞き、さらに言った。
「帰ったら動画サイトを探さなきゃ!」
Kほどの聞き上手、たぶん他には居ない。
「どんな風に? 待って、名前メモするわ」。
そして綴りまで聞く。
「ゆっくり言って。Adam Lambertね」。
この反応! 私が彼女を好きな理由のひとつがこれだ。彼女を前に大いに語る私。Kは興味津々な様子で聞き、さらに言った。
「帰ったら動画サイトを探さなきゃ!」
Kほどの聞き上手、たぶん他には居ない。


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