YOUが送るオンライン読み物「シアワセを感じる100歩」

「食べる」を楽しむ。

023.gif「早いもので、夫と二人で日本を旅行してからもう1年。あのレストランであなたに会えて良かったわ」。オーストラリアに住むウェンディーさんが、そんなうれしいメールをくれた。京都の中華料理店で、偶然隣に座ったという縁で始めた私たちのメール交換は、今も続いている。(詳しくは「第13歩 試すを楽しむ。」をご覧ください)。大学で言語を教えているという彼女のメールは、いつもユーモアたっぷり。お気に入りの話題は「食べること」で、日本での食体験は頻繁に綴られる。「あのラッキーバッグは、面白かったわ」と、彼女。ラッキーバッグとは日本で買った福袋のことだ。オーストラリアにはないので、話のタネにと食品の福袋を買った。ホテルで袋を開けると、お茶などに混じって不審な箱がひとつ。彼女は箱の中を確かめた。出てきたのは銀色の包みに入った直方体の何か。「何コレ?銀色のカバーにすっぽり包まれているのはなぜ?ヤダ、ちょっと柔らかい・・」と夫に見せた。「さっぱりわからないよ。コレ税関通るのかなあ」「ええ。税関は問題よね」「怪しいものだったらどうする?ホテルの人に聞こうよ」なんて会話が夫婦間で繰り広げられたとか。なかなかのストーリーテラーの彼女。読みながら私も推理してしまう。箱?銀色?直方体?ああアレかな。そしてこう続く。「ホテルの人によると、小豆で出来た日本のお菓子ですって」。やっぱりね。答えは「ようかん」だ。「スライスして食べるんですってね。うちに帰って、ホテルの会話を思い出して大笑いしながら食べたわ」。

食べる楽しみを常に満喫する彼女。「日本では全てがおいしかったわ。何を食べているのか、ほとんどわからなかったけど」とも言う。昔の偉い人が「食べるために生きるな、生きるために食べよ」と言ったが、そんな栄養補給みたいな食べ方より彼女のように楽しく食べたい。「食べるために生きるっていいなあ!」のほうがずっといい。

別のメールにはこうもあった。「日本のお寿司が恋しくて、孫が遊びにきたときにアジアンマーケットで材料を買って、巻き寿司パーティーをしたの。巻き寿司の具?適当よ」。何が巻かれたんだろう。とはいえ、おばあちゃん作の日本料理にお孫さんも飛びついたのではと思いきや「それが大変なことになってね。孫より先に、息子がお寿司をつまんだんだけど、絶叫するわ、涙を流すわで大騒ぎ」。わさびの入れすぎだ。「あれは危険よね。封印して、戸棚の奥に閉じ込めたの」。何も封印しなくても・・。しかし、わさびを入れすぎた理由がまた強烈だ。「わさびのグリーンがとってもきれいだから、デコレーションに丁度いいと思ったのよ」。その恐ろしい1文の後に「わさび抜きにした後は大好評でした」との結末も。彼女の独創的な日本料理は、家族皆の記憶にしっかり残ったことだろう。

全世界共通の「食べる楽しみ」。あの日、あの場所で、あの人と一緒に食べたおいしいもの-その味の記憶は、情景までも呼び起こしてくれる。誰にでも「忘れられない味」があるのはきっと、思い出ごと食べているからに違いない。

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執筆者・坪田多佳子プロフィール

1963年東京生まれ。ライター、小論文及び国語科専門プロ家庭教師。
「シアワセ感じる100歩。」は、2007年4月から2009年3月、朝日新聞の姉妹紙「RAKU(楽)」に掲載し、好評を得た。現在は「YOUよっかいち」の紙面と伊賀タウン情報YOUホームページで連載中。
日常生活で見つけた小さなシアワセをテーマに「~を楽しむ。」と題して1か月に1歩ずつ歩み続け、「100歩。」達成を目指す。
YOU紙面へはピンクリボンの記事も出稿。
趣味は読書、料理、英会話。インターネット上で、日本マニアの外国人に日本語を教えたりもしている。
家族は夫、息子、娘。松阪市在住。