YOUが送るオンライン読み物「シアワセを感じる100歩」

「迷う」を楽しむ。

022.jpg1月になると考える新年の抱負。今年は何にしよう。何か出来るようになりたいが、出来ないことがありすぎる。とすると「出来て当然」なことを優先すべきか。例えば「道に迷わないようにしよう」とか。

特に昨年は、取材などで行ったことのない場所に出向くことが多かった。だが、すんなり目的地に行き着いたためしがない。先月など、三重県警に行くつもりだったのに、着いたら津警察だった。無事取材を終えたものの、何でこんなことになるんだろうと落ち込んでいたら、I記者に「県警だけじゃなく、津警察の場所もわかって良かったじゃないですか」と慰められた。言われてみればそうだ。迷いはするが、いつもどうにか目的地に着いている。方向音痴は思いがけない場所へ行くチャンスかも、と考えることにした。

次の週、また迷った。人と会う約束がお昼過ぎだったので、会う前に昼食をとろうと思った。初めての街で1人優雅にランチ、の予定だった。駅を出て、あの店に入ろうかこっちにしようか、もっと素敵な店があるかな・・と歩いていくと、だんだん飲食店がなくなってきた。その上、食べることばかり考えて歩いたせいか方向がわからなくなった。しまった、とりあえず目的地だけは確認しなくてはと、通りかかった高校生に道を聞く。目的地からやや遠ざかっていたようだが、場所がわかって一安心。途端にお腹がすいてきた。来た道を戻る時間もないなと思ったとき、前方に見えたのは牛丼家。知らない店だが、とにかく入ろう。入り口はガラスの引き戸だが、「押す」と書いてあった。引き戸なのに、なぜ?と空腹に朦朧としながらガラス戸を押した。開かない。中の人がこちらを見ている。焦ってもう一度押して気がついた。「押す」という表示の上を押すのだった。すーっと戸が開いた。こんなガラス戸が自動ドアだなんて誰が思うだろう。意外性に感動したのも束の間、中に入ってまた驚いた。店内一杯の客が、全員男子高校生なのだ。まるで学食だ。ちょっとひるんだが、空腹なので座る。さて注文だ。声がかかるのを待ったが、店のおばさんは私より後に来た学生たちの注文ばかりとっていく。おかしい。私が先なのに。年齢順?まさかね。よく見ると食券を買うシステムだとわかった。券売機は?・・店の隅にあった。もうすぐだ、もうすぐ食べられると思いつつお金を投入。でも押しボタンが多すぎる。トン汁つきの券はどこ?後ろに学生が並んで待っているので、仕方なくボタンを適当に押した。出てきたのはサラダ付きの牛丼の券。案外いい選択だった。人心地つくと、店内を見渡す余裕ができた。友だちと笑い合い、豪快に食べる高校生たち。異空間には温かい時間が流れているようだった。私はお腹も気持ちも満たされて、店を出た。目的地には20分前に到着。上出来だ。

やっぱり「道に迷わないように」なんて抱負はやめにする。世界中が今、厳しい状況にあるというのだから、この迷える2009年を、賢く元気に乗り切るような抱負がいい。それなら、これだ。「『迷う』を楽しむ。」たぶん今年も、私は道に迷う。だけど、その道中が楽しみでもある。

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執筆者・坪田多佳子プロフィール

1963年東京生まれ。ライター、小論文及び国語科専門プロ家庭教師。
「シアワセ感じる100歩。」は、2007年4月から2009年3月、朝日新聞の姉妹紙「RAKU(楽)」に掲載し、好評を得た。現在は「YOUよっかいち」の紙面と伊賀タウン情報YOUホームページで連載中。
日常生活で見つけた小さなシアワセをテーマに「~を楽しむ。」と題して1か月に1歩ずつ歩み続け、「100歩。」達成を目指す。
YOU紙面へはピンクリボンの記事も出稿。
趣味は読書、料理、英会話。インターネット上で、日本マニアの外国人に日本語を教えたりもしている。
家族は夫、息子、娘。松阪市在住。