YOUが送るオンライン読み物「シアワセを感じる100歩」

「泣く」を楽しむ。

020.jpg最近、どうも涙もろくて困る。きっと歳のせいだろう。新聞の悲しい記事はもちろん、読者からの感動的な投稿などにも簡単に涙してしまう。先日の米国大統領選をテレビでみていたときも大変だった。オバマ氏の勝利の演説を聞きながら涙を流す黒人男性の顔が画面一杯に映し出された途端、彼の親戚でも何でもないのに泣けてきた。このまま涙腺がゆるみ続けると、将来どうなってしまうのだろう。これについて友人と「脳の劣化かなあ。感情をコントロールするところが弱くなったのかも」などと語り合った。彼女は「そういうけど、あなたはしょっちゅう国語の問題を解いたりしてるじゃない。もっとたくさんやって脳を鍛えなさい」と言った。たしかに老化防止に「脳トレ」がいい、といわれて久しい。彼女の言うように手近にある高校生用の問題集を活用して、論理的思考力を磨こう。そうすれば涙も脳の老化も止まるかも、と思った。

先日のことだ。いつものように調子よく問1の「評論」を解き、問2の「小説」に移った。小説の舞台は電車の中。父親が、幼い息子と会話をしている場面だ。母親は亡くなっている。さりげない会話の中に、彼女が夫へ託した子どもへの思いが滲む。巧みな情景描写。読み進むうちに、小説の世界に入り込んでしまった。まるで自分が幼い子どもを残して急逝した母親になったかのように感情移入する。なんだか、泣けてきた。が、そのまま問題を解く。「この時の父の気持ちを次の中から選べ。」「1....妻を時間をかけて忘却するしかないと思っている」。(1はバツ!忘れるはずないじゃない)そんな選択肢を作った問題作成者に軽く腹を立てる。正解は...「3...愛する人の存在は、いつまでも心に残る」(これよ!)涙をぬぐって問題集から顔を上げると、いつの間にか2階から下りてきた息子と目があった。怪訝な表情の息子。慌てて「問2が泣けるのよ!」と説明した。彼は「あり得ねー」とひとこと。「でもこれ、模擬試験の問題集よ?試験中、解きながら何人かは泣いただろうねえ」。彼は「それはないと思う」ときっぱり。私は(なんてドライな高校生たち...)などと思ったりした。

問題集も、涙腺を刺激するばかりで役に立たない。それより単純なパズルのようなもののほうがいいのかも。クイズやパズルはネット上にたくさんあると聞いたので、検索すると面白そうなサイトを見つけた。「Play petals around the rose(バラの花びらのパズル)」とある。よし、やってみよう。すっかり夢中になって、考えに考えた。(わかった!)何かが降りてくるように閃いた。得意になって解説を読むと、「ビル・ゲイツも解けなかったパズル」とある。(すごい!老化どころか、私、天才かもしれない)と思った。が、解説はさらに続く。「ビル・ゲイツが解けない。つまりこれは、頭のいい人ほど解けないパズルなのです。」...そうして私はまた、泣けてくるのであった。

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執筆者・坪田多佳子プロフィール

1963年東京生まれ。ライター、小論文及び国語科専門プロ家庭教師。
「シアワセ感じる100歩。」は、2007年4月から2009年3月、朝日新聞の姉妹紙「RAKU(楽)」に掲載し、好評を得た。現在は「YOUよっかいち」の紙面と伊賀タウン情報YOUホームページで連載中。
日常生活で見つけた小さなシアワセをテーマに「~を楽しむ。」と題して1か月に1歩ずつ歩み続け、「100歩。」達成を目指す。
YOU紙面へはピンクリボンの記事も出稿。
趣味は読書、料理、英会話。インターネット上で、日本マニアの外国人に日本語を教えたりもしている。
家族は夫、息子、娘。松阪市在住。