YOUが送るオンライン読み物「シアワセを感じる100歩」

「任せる」を楽しむ。

016.jpg朝、車のエンジンがかからなかったのでJAFを呼んだ。「バッテリーに問題がありますね」と、いとも簡単に作業をするJAFの人。うっとりするような手際の良さだ。それを見ていたら、何だか車に詳しくなりたくなった。機械がムズカシイからといって事あるごとに「お任せします」では芸がない。だから「バッテリー、変えましょうか?」という申し出を「大丈夫です」と断った。

まずは納得のいくバッテリーを探そうと、インターネットで「バッテリー・種類」を検索。しかし......アンチモン合板?硫酸分がイオン化?......何のことだろう。早くもJAFに任せておけばよかったと後悔。とはいえバッテリーを買わなくてはと思った時、店が開くまで1時間以上あることに気付く。今かけたままにしているエンジンは切れない。帰り際に彼は「30分は切らないでくださいね」と言ったのだ。「エンジンを切ると、また動かなくなる場合も?」と聞くと「可能性はあります」とも。でもここでエンジンをかけっぱなしにしていいのか?車が熱を持ち、他の部分がどうかなってしまうとか?など、詳細不明の悪い事態を想像。それならいっそ、カー用品店の駐車場で待とう。何かあってもそこには部品がある。店の駐車場で1時間待機する決意をした私は、本や食べ物を持って車を発進させた。

「どうしたんですか?」不審な客は、15分も経たないうちに出勤してきた店の人に声を掛けられた。事情を話すと、彼は親切にもシャッターを開けバッテリー売り場へと私を誘導。だがバッテリーは驚くほど種類が多く、結局彼が選んだものに交換してもらったのだった。

以来、わからないことは素直にわかる人に任せようと一層思うようになった。自分が苦手なことは、迷わずプロに任せる。合理的である上、間違いがない。信頼するからこそ任せるのだ。

しばらくは元気だった車だが、再びトラブルが起きた。駅のロータリーに駐車していたら、タクシーの運転手さんがやってきて窓を叩く。車が邪魔なの?と焦って窓を開けると「タイヤ、パンクしてますよ」という。そんなばかな。半信半疑で外に出る。「ほら、ここ」。へこんでいる。見事に。「普通、気が付くんだけどなあ」と呆れ顔の運転手さん。私は絶望的になりながらまたJAFを思う。すると駅前にいた他のタクシー運転手さんたちまで集まってきた。「スペアタイヤある?」1人の運転手さんが言った。「ええ、確かここに」私はトランクを開けた。工具もある。「しょうがないなあ」と彼はいい、もう1人の運転手さんといっしょにジャッキアップ。早い!さすがだ。他の人たちも、作業に口出ししながら温かく見守る。何もかも任せっきりの私といえば、お茶も出せずひたすら感謝するばかりだった。

私の毎日は、多くの人の善意で支えられているような気がしてきた。お任せしてばかりいないで、自分の得意なフィールドで任せてもらえることを探さなくてはと思いつつ、再びカー用品店へ。パンクしたと告げると、店員さんがタイヤについて詳しい説明を始めた。そのとき私の口から出た言葉は、皆さまのご想像にお任せします。

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執筆者・坪田多佳子プロフィール

1963年東京生まれ。ライター、小論文及び国語科専門プロ家庭教師。
「シアワセ感じる100歩。」は、2007年4月から2009年3月、朝日新聞の姉妹紙「RAKU(楽)」に掲載し、好評を得た。現在は「YOUよっかいち」の紙面と伊賀タウン情報YOUホームページで連載中。
日常生活で見つけた小さなシアワセをテーマに「~を楽しむ。」と題して1か月に1歩ずつ歩み続け、「100歩。」達成を目指す。
YOU紙面へはピンクリボンの記事も出稿。
趣味は読書、料理、英会話。インターネット上で、日本マニアの外国人に日本語を教えたりもしている。
家族は夫、息子、娘。松阪市在住。